諸行無常とはよく言ったもので、営業人材の価値も時代によって変化しています。
営業職はどの業界でも採用が難しいと言われています。その背景には単なる人手不足ではなく、営業という職種そのものの役割が大きく変化しているということがあるようです。
はじめに
SaaSビジネスの普及により、企業が求める営業人材のスキルは、普及前とは結構違うものになっています。
ちなみにSaaSは「Software as a Service」の略で、「ソフトウェアをサービスとして提供する」という意味です。ビジネスでは主に、既製品の買い切りではなく、製品やサービスを継続利用してもらうことを指します。お客様に継続的にサービスを利用してもらい続けることで、費用を払い続けてもらうわけです。
今回は、そんなSaaSビジネスの普及で営業人材の市場価値がどう変化しているのか、そして企業が今採用すべき優秀な営業人材とはどんな人材なのかを明確にできれば重畳です。
営業人材の市場価値はなぜ上がっているのか?
SaaSビジネスの普及で既製品の買い切り型からサービスの継続利用型に替わったことで、営業の価値がなぜ変わったのかを見ていきましょう。
「営業の役割」が変わったから
従来の営業は多くが「売って終わり」でした。しかしSaaSでは、契約後の継続利用、解約率の低減、顧客の成功体験の創出がビジネスにとって重要です。営業が目指すのは継続利用であり、そのためには顧客の成功体験の創出が必要なのです。
「営業の役割」は「売って終わる仕事」から「顧客の成功をつくる仕事」へ変わりました。
営業の分業化が進み、専門性が求められるから
SaaS企業では営業が細分化されています。
まずインサイドセールスが「見込み客の創出」を行います。見込み客とは客になってくれそうな見込みのある人のことです。インサイドセールスは、主に電話やメール、オンラインチャットなどのデジタルツールを使い、客になってくれそうな人にアプローチします。
次にフィールドセールスが商談・クロージングを行います。実際に商談を行い、契約に持っていくのです。
そしてカスタマーサクセスが契約後の成功支援を行います。顧客が自社のサービスや製品を最大限に活用できるよう、支援や伴走を行うのです。
この分業化により、営業が1人で見込み客を見つけてアプローチし、成約にこぎつける「何でも屋」ではなく、専門性の高い各営業担当者がチームで動く営業が求められるようになったのです。
求職者側の価値観が変化したから
20〜30代の営業経験者は「成長できる環境」「裁量」「リモートワーク」「SaaS企業へのキャリア志向」を重視する傾向が強いそうです。成長できる環境がなく、裁量が不自由で、オフィス重視で、売って終わりな企業は、多くの若い営業経験者が避ける傾向になったわけです。
SaaS時代に企業が求める営業人材とは?
優秀な人材は「顧客がその企業を継続的に利用してくれる」SaaS企業を志向しがちなようです。
そんなSaaS企業の採用基準は、従来の営業とは大きく異なります。特に評価される点は次の5つだそうです。
誰がやっても同じように売れる営業プロセスを持っているかどうか
SaaS営業に「属人的な営業」、すなわち個人の勘に頼った売り方は合わないと言われています。1人の担当者ではなく、チームワークで仕事を進めるからです。
SaaS営業は見込み客を見つけて成約し、その後も継続して顧客と付き合うので、現実的に1人の営業ですべてを行うのはかなり困難です。ですから、チームワークなのです。そのため、勘のような感覚ではなく、情報をチームで共有できる人材が求められます。
つまり、成約までのプロセスを他のメンバーと共有できる人材です。1人の担当者が分かっていれば良いのではなく、チームのメンバーが同じ情報を持っている必要があります。
数字から判断し、行動できるかどうか
SaaSでは営業の結果がすべて数字で見えるため、感覚だけで動く営業は通用しません。例えば、「商談化率」「受注率」「解約率」「LTV」「ARR」という数字が重要になります。ARRは「Annual Recurring Revenue(年間経常収益)」の略で、SaaSでよく使われる「毎年どれだけ安定して入ってくる売上か」を示す指標です。
こうした指標を理解し、「どこを改善すれば成果が上がるか」を考えて動ける営業は高く評価されます。
顧客の課題を深く理解できるかどうか
SaaS営業は課題解決型営業、コンサル型営業なわけです。コンサル型営業は、顧客の課題を発見し、最適な解決策を提案する営業スタイルであり、単なる商品販売にとどまらず、顧客の信頼を得ることを重視します。つまり、商品説明だけではなく、顧客の業務を理解し、改善提案できる力が求められます。
チームで成果を出せるかどうか
SaaS営業は分業制であり、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが連携しなければ成果が出ません。
各担当者の情報共有、フィードバック、改善をチームでできる人材が評価されます。
顧客の成功まで見据えた営業をできるかどうか
契約して終わりではなく、顧客が成功するまで伴走できる営業は市場価値が非常に高いと言われています。
企業が営業採用で失敗する理由
多くの業界で人材不足が課題となっている今、「営業職の採用」も同様で、優秀な人材の確保は難しいです。
しかしそれは「優秀な営業がいない」からではないようです。
採用基準がアップデートされていないから
多くの企業は、採用基準が古いままになっていると言えます。
例えば「話すのがうまい=営業ができる」という誤解がまだ存在します。しかし、SaaS時代の営業は聞く力やチームの一員として仕事を行える力が重要です。
数字だけで判断するから
また、数字だけで判断してしまう企業もあります。
もちろん数字は重要ですが、さらに見るべきなのは、数字から顧客理解や改善点を見つける力です。
求職者の価値観を理解していないから
優秀な営業ほど、成長できる環境、裁量、働き方、SaaS企業志向を重視しているようです。
SaaS時代に企業が採用すべき営業人材
まとめると、企業が採るべき営業人材は、顧客の課題解決を最優先に考え、単なる商品販売ではなく戦略的な提案を行うコンサル型営業経験者、顧客の課題やニーズを深く理解し、最適と思える解決策を提供するソリューション営業経験者ということになります。
もしくは、そうした営業スタイルを志望する未経験者ということでしょうか。
さらにまとめ
SaaSの普及で営業の役割は「売る人」から「顧客の成功をつくる人」へと変わりました。役割は変わり、求められるスキルは多様化、重層化しています。製品やサービスと顧客をつなげる営業の価値は上がり、また今後も上がり続けることが容易に予想されます。
とは言え、扱う商材によっては昔ながらの「売って終わり」という営業スタイルが必要とされ、個人の勘に頼った売り方のほうが合っているところもあるかもしれません。流行に惑わされない、冷静な判断が肝心です。
