営業という仕事は人間らしい仕事です。数字を追いかける仕事なのに、人の気持ちを扱い、人の未来を考え、ときには人生相談に応じることもあるのですから。
はじめに
AIが提案書を作り、誰もがインターネットを通じてさまざまな情報を持ち得る今、営業に求められるのは「相手の世界を理解し、そこに寄り添いながら前へ進める力」かもしれません。
今回は、営業の現場で本当に役に立つ10のスキルをさらっと紹介します。
1. ヒアリング力
すなわち聞く力です。営業に必要なスキルとしてはいささか使い古された感もありますが。
ただ聞くだけではありません。相手の、まだ言葉になっていない気持ちを拾うことが肝心です。営業のヒアリングは、質問の数で勝負するものじゃないようです。相手が話しやすい空気を作れるかどうかです。
仮に顧客が「最近、問い合わせが減っていて…」と話し始めた場合。優れた営業はすぐに原因を推測したりしません。その声は焦っているのか、ただの愚痴なのか、本当に困っているのか、まずは相手の言葉の温度を感じ取ります。この「空気の読み取り」ができると、顧客は自然と本音を話し始める、かもしれません。
肝心なのは、相手の言葉の奥にある「まだ形になっていない気持ち」をくみ取ることです。
2. 課題発見力
営業は、顧客の話のポイントをつなぎ、線をつむぎ、1枚の絵にする仕事です。
課題発見はパズルに似ているかもしれません。顧客が話す断片的な情報をつなぎ合わせて「本当の問題はここだ」という1枚の絵を描くのですから。
顧客はしばしば「売上が下がっていて…」「広告が効かなくて…」と目の前の事実だけを話すかもしれません。課題は、その事実の中に埋もれていることが多いです。
優れた営業は、顧客の言葉を点として受け取り、業界知識やデータを線としてつなぎ、最後に絵として構築します。
そして例えば「商品をアピールするターゲットを絞り込めていない」とか「広告手段が、設定したターゲットにそぐわないものだった」とか「値段設定を誤っていた」など、顧客の課題を言い当てます。言われた顧客がハッとするようなら、顧客からの信頼を勝ち得たと言って良いでしょう。
課題発見とは、顧客の頭の中のモヤモヤを1枚の絵にして見せる力、なのかもしれません。
3. 提案力
提案力とは商品説明ではなく、未来のストーリーを語る力です。
提案が刺さる営業は「商品を買ってほしい」といったことは言いません。その商品を使った未来を語ります。「未来を語る」なんていうと、妙にカッコつけている感じですが、もう少しくだけた言い方をすると「商品を使うとどうなるかを具体的に話す」ということです。例えば「このツールを導入すると、業務効率が30%改善します」と言われてもピンとこなかったりします。でも、「今、毎日2時間かかっている作業が40分になります。その空いた時間で、今まで後回しにしていた顧客フォローができるようになります」と言われると、急にリアルになるかもしれません。
顧客が「この未来、ちょっと良いかも」と思った瞬間、提案は成功している、かも。
4. コミュニケーション力
コミュニケーションは営業の仕事ではとても重要だと言われがちですが、要するに「相手の脳のクセに合わせて話す」ことが肝心です。コミュニケーション力とは、相手に届きやすいよう、相手の脳のクセを見抜き、言葉を最適化する力とも言えます。
営業はただ話せば良いのではなく、営業トークを相手の理解しやすい形に変換する必要があるわけです。
例えば、数字が好きな人には数字で、感覚派にはストーリーで、いらちの人には結論から話します。同じ内容でも、伝え方を変えるだけで、相手の反応も違ってくるかもしれません。
5. 時間をうまく使える力
営業は、やろうと思えばいくらでもやるべき仕事があります。ですが、成果を出す人は「やらないこと」を決める勇気を持っています。
例えば、反応の薄い顧客へのフォロー、目的のない会議などの「売上につながらない仕事」を切り捨てると、本当に大事な仕事に時間を使えるようになるかもしれない、ということです。
6. データを使う力
数字がすべてを語ってくれるわけでもありません。
営業で数字を扱うというのは、その数字の裏にある物語を読み取ることだと言えます。例えば「問い合わせが先月より20%減った」という数字があった場合、優れた営業は「競合の広告が増えた?」「季節要因?」「顧客の検索行動が変わった?」などと考えます。数字を扱う力とは、数字の向こう側にある人の動きを読み解く力でもあるのです。
7. 続ける力
何でもそうですが、結局は小さな前進を積み重ねる人が勝ちます。そうした地味な積み重ねができる人が営業としても強いと言えます。
「毎日、ほんの少しだけ前に進む」「昨日より1つだけ改善する」「失敗しても、また次の商談に向かう」ことを淡々と続ける力が、大きくモノを言うのです。続ける力とは、昨日より少しだけ良くする習慣とも言えます。
続ける力がある人は、商談の質が自然と上がり、顧客との関係が深くなり、優れた営業パーソンとしての才能を開花させる、かもしれません。
8. 関係づくりの力
信頼は誠実さの積み重ねでしか生まれません。信頼はゆっくり積み上げられ、一瞬で失われるものだったりします。
顧客との関係は、小さな誠実さの積み重ねで強くなります。約束の時間を守ることはもちろんですが、連絡への返信は早く、簡潔に行い、顧客の業界ニュースを共有し、契約後のフォローを怠らないといった「地味だけど誠実な行動」が、顧客の心にじわじわと積み重なっていくのです。
関係づくりとは、相手の時間と気持ちを大切に扱う姿勢だと言えるでしょう。
9. 自分を整える力
メンタル、体調、習慣が成果を決めます。営業は、数字を追う仕事であり、同時に感情を扱う仕事でもあるので、自分を整える力が成果を大きく左右します。
「自分を整える」というのはつまり、自分を適切に管理するということです。寝不足だと判断が鈍りますし、食事が乱れると集中力が落ちますし、ストレスが溜まると商談で余裕がなくなります。よく寝て、よく食べて、適度に運動して気持ちを整えていれば、コンディションも万全で、気持ちに余裕を持って商談に臨めるでしょう。
10. 学び続ける力
変化の激しい時代の最強スキル、それが「学び続ける力」です。
世界は激しく日々変化します。AI、DX、顧客行動、競合環境と、ビジネスの世界も激しく変化します。昨日の正解が、今日は通用しないなんてこともあります。
そんな世の中では、本を読み続け、商談を振り返り、うまい人の真似をし、新しいツールを試し、映画か伝統文化などの芸術に触れ、業界の変化を追い、古い映画も偏見なく見て、落語や浄瑠璃をたしなみ、年長者を敬い、周囲の目を気にせず、偏見を捨て、常識やネットニュース、AIを疑い、自分を信じると同時に疑い、学び続ける人が最強です。
まとめ
営業は「人の気持ちと未来」を動かす仕事だと、誰かが言っていた気がします。


